研究室紹介

宇宙進化グループの研究内容

宇宙の構造形成:銀河形成とブラックホール形成

宇宙論的流体シミュレーションと銀河形成

 ダークマターとダークエネルギーによって支配された宇宙の構造形成を、宇宙初期から現在に至るまで、理論モデルや宇宙論的流体シミュレーション(GADGET3-Osaka SPH code; Shimizu et al. 2019) を用いて研究を行なっている。以下に実際に2019年度に論文に結実した研究成果例をいくつか挙げる。

 宇宙の銀河間空間に広く分布するガスは、ビッグバンからおよそ10億年(赤方偏移z〜6)頃までに中性から電離状態に遷移したことが、宇宙背景放射やクエーサーなどの観測から知られている。この「宇宙再電離」を起こした電離光子は主に初代銀河から放出されたと考えられており、初代銀河の形成と進化を理解することは、現代宇宙論研究の重要な課題の一つである。近年の観測によって、初代銀河は紫外線(UV)連続光と赤外線のダスト連続光・金属輝線([O III]88μmや[C II]158μm)など多波長で検出され始めており、その輻射特性には多様性があることが明らかになってきた。我々は、どのようにして初代銀河の観測的多様性が生まれたのか、またそれが銀河進化とどのように関係するのかを明らかにした(Arata et al. 2019, 2020)。より具体的には、宇宙論的流体シミュレーションと多波長輻射輸送計算を組み合わせ、z=6-15における銀河進化と輻射特性を調べた。その結果、超新星爆発の影響により星形成が間欠的に進み、ダスト分布が共に変化することで、UV光子の脱出率が20-80%の間で変動することを見出した。また、[O III]と[C II] 輝線に関する非平衡計算を行うコードを独自に開発し、初代銀河からの輝線放射について計算した。

シミュレーション内の多数の銀河から平均的な[C II]表面輝度分布を計算し、中心から5 physical kpc以内の銀河からの放射を含む中心集中した成分と、外側の数十 physical kpcにまで広がった成分から成ることを見出した(Fujimoto et al. 2019)。この結果は、よりなだらかに広がった最近のALMAによる観測結果と比べて対照的であり、現在のシミュレーションのフィードバックモデルに改良の余地があるかもしれない事を示唆している。

 初代銀河の研究と相補的に、z=1-3頃の銀河とバリオンの分布についても調べている。これは銀河がどのように質量を獲得して成長するかという重要な問題に直結しているからである。特に近年、銀河の周辺物質(Circumgalactic medium; CGM)の分布が研究の焦点となってきており、銀河よりも外側だがまだダークマターハロー内部のガスの分布を観測的にも調べることが可能になってきている。我々は、すばるPFSサーベイを念頭に置きながら、宇宙の中性水素(HI)・銀河・メタルの分布について、相互相関関数を用いて調べた(Momose et al. 2020a,b)。その結果、より質量が大きく星形成率も大きい銀河の方が 周辺のHIガスとの相関が強いことがわかり、通常の銀河バイアスと整合的な結果が得られた。一方、Lyman-𝛼 emitterについては最も高密度な領域は避けて分布しているという興味深い結果が得られた。また、CGMからのH𝛼輝線分布もダストの効果を考慮しつつ計算し、その輝度分布を求めた結果、上述した[C II]輝度分布と同様に、観測データの方がよりなだらかに銀河周りに分布していることがわかった(仲田修論)。今後、この宇宙論的シミュレーションと実際の観測との違いを精査し、アウトフロー率やmass-loading factorなどを吟味してフィードバックモデルを改良していく。

巨大ブラックホール形成とダイレクトコラプスモデル

 早期宇宙における巨大ブラックホール形成の有力なシナリオとしてダイレクトコラプスモデルがあるが、我々はその可能性について宇宙論的流体シミュレーションを用いて吟味している。各流体素片からの輻射を考慮し、Enzo adaptive mesh refinement (AMR)コードを用いて宇宙論的なズームシミュレーションを実行している(Luo, Nagamine, Shlosman 2016; Shlosman et al. 2016; Ardaneh et al. 2018; Luo et al. 2018)。その際、水素分子(H2)の形成を阻害する背景紫外線場(UVB)の存在を仮定しているが、実際のUVBは近傍の星形成やブラックホールなどからの輻射の重ね合わせであり、その強度についてはよく分かっていない。そこで、我々は3次元輻射流体コードを用いて、その効果について吟味した。その結果、H2とH-の光解離率のパラメータ空間において水素原子冷却からH2冷却支配に切り替わる境界領域を、先行研究よりもより一般的な形で見出すことに成功した(Luo et al. 2020)。通常のUVや可視光などの連続光に加えて、現在さらにLyα輝線の輻射輸送を考慮して、その輻射圧の影響についても吟味している。

高エネルギー宇宙物理

銀河団形成過程

 銀河団での宇宙線加速の要因となっている衝撃波や乱流は、銀河団が形成する過程で起きる銀河団同士の衝突、合体によって励起する。そこで銀河団の形成過程、特に銀河団の内部構造と成長過程の詳細な関係を調べた。

 そこで我々はまず CLASH 銀河団サンプルについて、それぞれの銀河団の半径、質量、温度を調べた。半径と質量は重力レンズ観測で、温度はX線観測で得られたものである。そしてこれらのデータを3次元対数空間にプロットしたところ、非常に薄い平面状に分布することを見出した(Fujita et al. 2019)。さらに宇宙論的なシミュレーションでもこの平面の存在を確認した。銀河団は成長する過程で、温度が上昇し、質量と半径が増加するが、それは銀河団のこの平面上の移動で表されることもシミュレーションは示している。またこの平面は銀河団中のAGNフィードバックなどの効果はほとんど受けない。

星の物理:太陽物理研究、星形成研究

太陽大気における爆発現象の研究

 太陽をみると、様々な時空間スケールで多様な爆発現象を示していることがわかる。我々は磁気リコネクションと言われる物理機構が駆動する爆発現象に関して研究を進めている。爆発現象の代表例である太陽フレアは、黒点上空に蓄えられた磁気エネルギーが磁気リコネクションによって解放されることで発生する。我々はこのエネルギー蓄積・解放機構についてシミュレーションを用いて研究してきた。例えば、大フレアを起こしやすい黒点の形成過程に関する研究(Takasao et al. 2015b, Toriumi & Takasao 2017)や、磁気リコネクションで駆動された高速プラズマ流が作る衝撃波の振る舞いとフレアの観測的特徴との関連性を調べた研究(Takasao et al. 2015a, Takasao & Shibata 2016)がある。

円盤降着を受け成長する原始星の磁気流体シミュレーション

 太陽をはじめとする星は、分子雲の重力崩壊で開始する。生まれたばかりの星である原始星や前主系列星は周囲に形成された円盤から降着を受けて進化する。そのため、最終的にできる星の状態を理解するには星・円盤の相互作用過程を解き明かす必要がある。この星・円盤相互作用は星表面と円盤の複雑な磁気流体過程が関わる過程であるため、長年その点は星形成理論におけるミッシングリンクとなっている。それに対し我々は太陽物理で培った知見を土台にして、大規模3次元磁気流体シミュレーションを駆使しこの問題の解明に取り組んでいる。

 降着円盤からは円盤風というガスの吹き出しがあると考えられており、円盤ガスの質量や角運動量の抜き取りに重要だと言われている。しかし乱流的な円盤からの円盤風がどのように振る舞うかは十分よく知られていなかった。我々は乱流円盤からの円盤風の一部が星へと落下して降着流へと遷移する、新しい降着形態を見つけた(Takasao et al. 2018)。

 原始星は太陽フレアの10万倍ものエネルギーを一気に解放する超巨大フレアを起こすことが観測的に知られている。低温な星形成領域でこのような巨大爆発が起きると、周辺環境に多大な影響を及ぼす可能性があるため重要だ。この爆発の起源は十分理解されていなかったが、我々は原始星フレアに相当しうる爆発を計算機内で再現する世界初の3次元シミュレーションを行うことに成功した(Takasao et al. 2019)。

General-relativistic simulations of neutron stars

 We have mainly worked on numerical simulations of compact stars, isolated and in binary systems, with magnetic fields. In order to help and interpret observations, we need solutions of the general-relativistic equations describing spacetime, matter and magnetic fields. As everyone knows, analytic solutions of astrophysical relevance for binary—neutron-star systems are not available, therefore numerical-relativity simulations are necessary. Simulating magnetic fields around compact objects is challenging because of physical instabilities that require very high resolutions to be resolved and because of limitations in the modeling of electromagnetic interactions. Most simulations, in fact, are carried out in the magnetohydrodynamics approximation, which does not capture all the physical effects, like upper limits to the growth of instabilities. Resistive-magnetohydrodynamics simulations exist in small numbers, but they are limited by our lack of knowledge about the resistivity of matter in and around NSs. This is something we are trying to work on. The open problems with magnetic fields in BNS mergers apply especially to the post-merger phase, where magnetic fields may have a huge importance for the dynamics itself, for the ejecta, and for electromagnetic emissions from the vicinity of the merged object (like those thought to produce short gamma-ray bursts). Before the merger, magnetic fields are not relevant for the global dynamics, but may produce observable electromagnetic radiation, as found in works employing resistive magnetohydrodynamics.

 We have also continued to work as part of the KAGRA collaboration for the construction and running of the Japanese underground cryogenic interferometric detector of gravitational waves, which will hopefully start taking data this academic year, in conjunction with the LIGO and Virgo Collaborations.

研究業績リストはこちら (NASA/ADS) (Since 2013)